宮沢章夫「サーチエンジン・システムクラッシュ」

描写そのものは、しっかりしているのに、少しでも気を抜くと全く訳の分からない場所に放り込まれてしまうような感じがする小説です。表題作に出てくる舞台(池袋とか)の近辺には行った事があるはずなのに、それがどこに当たるのか映像として漠然としてしか想像できないのが不思議でした。このあやふやな世界を作り出したことそのものを評価するのか、ただ分かりにくいと切り捨ててしまうのか、それによって評価が変わってくる作品なんだと思いました。どこか分からないものを、分からないままに見せてしまう手法ってものすごく演劇的だなと思います。
isbn:4167695014:detail