沢木耕太郎「杯―緑の海へ―」

作者の沢木さん自身も認めているように、サッカーに対してそれほど深い造詣がないということもあってか、試合の描写そのものは、ボクシングなどの他のスポーツノンフィクションの作品を書いた時のような新鮮さも深みも感じられませんでした。それでも、作品として面白く感じたのは、日本人がサッカーの日韓ワールドカップを韓国を拠点のして見たという独特の視点と、試合の間の日本と韓国の移動と、そこで起こるさまざまなハプニングの面白さがあったからだと思います。
ですから、自分はこの作品をサッカーの試合について書いたスポーツノンフィクッションだと思って買ったのですけど、作品としてはむしろ一種の旅行記なのだろうと思います。沢木さんにとっては、試合を見るだけでなく、そういった移動間のゴタゴタまで含めてワールドカップだったのでしょうし、直接間接的に関わった全ての人それぞれの楽しみ方があったお祭りだったのだろうと思います。
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