拙者ムニエル「華なき子」@吉祥寺シアター

日曜日に行った公演の感想になります。客入れの時、いきなり並ばされて一体何なのだろうかと、ものすごく戸惑ってしまったのですけど、舞台裏の楽屋まで使った学園祭の誘導という形での、物語の舞台になる高校でのコント風のちょっとしたお芝居があり、これが絶妙な感じのユルさ具合で何とも面白かったです。こういうかゆい所に手が届く茶目っ気のあるサービス精神というのはさすがだと思いましたし、舞台が始まる前に客席がいい感じで温まっていて、いい雰囲気でお芝居を観る事ができました。
(あらすじ)
ふがしと交通事故ゼロの島、足肌市。なぜかみんなはだしの島の高校に通う、花子(建みさと)は成績優秀、容姿端麗で、校内みんなのあこがれの的。そんな彼女にとって高校の学園祭はまさに伝説の1日になるはずだった。
そんな、彼女の思惑をぶち壊し、転校初日にして島内の伝説になった転校生のリサ(澤田育子)。
これが、「華なき女」花子と「華だけはある女」リサとの、長きに渡り、周囲の人達を巻き込みながらくりひろげられる女の戦いの幕開けだったのだった。
(感想)
客入れの時のお芝居のいい感じのほのぼのとしたユルさや、街や学校の設定がとてもうまく生かされていて、幕開けからお芝居にとてもいい感じで入っていけました。このままいい意味でのユルさが最後までずっと続くのかと思っていたら、途中からどこまでもドロドロとした女の戦いが繰り広げられ、意外な展開に正直驚きました。意外性があったという点では面白かったのですけど、ストーリーまで一緒に泥沼化してしまい、少し重苦しく取り留めのない感じになってしまった感があり、中盤以降は場面によっては観ていてしんどかったです。
主演の2人がハマリ役で役柄がぴったりだなあと思った反面、役者さんの個性任せにして脚本レベルで「華なき女」と「華だけある女」のキャラクター像を鮮明に色分けしなかったのも、中盤以降物語がごちゃついてわかりにくく感じた一因だと思います。特に、澤田さんが「華」以外にもいろいろな良さをもっている役者さんなだけに、そのことが建さんのキャラクター像とカブってしまい、今回は逆に災いになってしまったように感じます。個人的にはもっと2人のキャラクター像や、対立の構図をもっと鮮明にした方が面白かったかなあと思いました。
そんな、ストーリー面にはすこしだけ不満を感じましたけど、舞台の切り替えの時に使われるダンスの絶妙なウマ下手っぷりには理屈ぬきで楽しめましたし、会場をフルに使って作品に奥行きや距離感の違いを作りだしていく演出もテンポが良くてものすごい面白かったです。
ただ、今回に限ってはこのテンポの良い演出と、ドロドロした女の戦いの筋立てとの相性があまり良くないように感じました。個人的には、この演出でやるのだったら、とことん笑い倒すノンストップコメディなんかをやったら、馬鹿馬鹿しくも理屈抜きで面白い作品になるんだろうと思いました。
澤田育子さんを始めとして、加藤啓さんや伊藤修子さんなど、個性的で面白い役者さんの演技を楽しませてもらいましたし、所々ではこの劇団の凄さや面白さの一端を感じることができました。ただ、期待が大きかったせいもあるのですけど、この劇団の真髄を観たという気分にまでは、残念ながらなりませんでした。次回の公演は10月の予定で、とことんコメディタッチの作品になるということなので、こちらの方に期待です。