島田荘司「御手洗潔のダンス」

完全に嗜好の問題なのですが、私はいわゆる「本格ミステリー」と呼ばれている作品が、あまり好きではありません。謎解きのために作られた不自然すぎる箱庭のような空間や登場人物達の歪さや、謎解きは面白くても、物語や小説としてはいまひとつ面白みに欠ける作品が多いように思えるからです。そんな中、島田荘司さんの「名探偵・御手洗潔と、石岡君」のシリーズは、そんな抵抗感なく、楽しく読めました。
本作は彼らの活躍を描いた中編集になり、人間は空を飛べるはずだ、と言っている画家が、地上20メートルの電線上で空を飛ぶポーズで発見された、「山高帽のイカロス」など3編の作品が収録されています。彼らのデビュー作に当たる、「占星術殺人事件」のような強烈なインパクトはありませんが、質の高い、よくまとまった作品集になっています。
私は、自分が「御手洗」シリーズは何故抵抗感なく読めたのか、少し考えてみました。一つは、彼等のキャラクターの魅力というのが、当然、挙げられるでしょう。特に、個人的には、怒りのあまり激高して、壊れかける御手洗が好きです。
もう一つは、物語の中に、社会的な問題を絡ませたり、トリックに到るまでのストーリーの組み立てに注意が払われているので、ただの謎解きミステリーより、小説として読んで面白いということでしょう。それが、この作品のとっつきやすさと、作品としての質の高さ生み出しているのでしょうか。
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