町田康「へらへらぼっちゃん」

私にとって、作家ですが小説を読んだことがなく、パンクロッカーですが音楽を聴いたことがない、そんな町田康さんが書いた、初エッセーになります。内容的には、一言で言うと、町田さんが自分の日常について書いたエッセーです。その他に、色々と、説明する術を考えてみたのですが、どうしてもそれ以上いい言葉が、浮かんできませんでした。ただし、酒飲みで、勤労意欲がなく、時代劇ファンの、ロッカー兼作家の日常ですから、ただのエッセーにはなりません。基本的に、酔っ払いが嫌いな私にとっては最初の10ページ位は拍子ぬけでしたけど、読み進めるうちに、「わあ、このひと面白いわ」と思うようになりました。一見すると、なんということは書いていないように見えますが、時代劇言葉と、関西弁と、通常の話し言葉や書き言葉を縦横に操る言葉の選び方を見ていると、なにげない日常を書いているように見えて、その根底に深い教養に裏付けられていたりしますし、その文体も容易に真似できそうに見えて、実にとても真似しにくい独特な味がります。そして、そのそうした深みが出しゃばらずに、さりげなく文章になっているところが、かっこよくかつ、笑わしてくれる一番の理由でしょう。読むと、ささいなことで悩んでいる自分が馬鹿らしくなり、少しだけ、強気になれます。今度、ぜひ小説の方も読んでみたいです。
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