加納朋子「螺旋階段のアリス」

長年勤めた、大企業のサラリーマンから私立探偵になった男、仁木順平。事務所を開いたばかりで、暇を持て余している彼の目の前に現れた美少女・安梨沙が現れて、事務所で働かせて欲しい、と懇願されて助手役になってもらうことにする。
不思議の国のアリス」の物語とキャラクターをモチーフに、二人が依頼を解決していく過程から見える人間模様を描いた、七つの短編からなる連作ミステリー。
正直言いまして、「不思議の国のアリス」を読んだのが、もう相当昔になるので、モチーフで使われているキャラクターは、半分以上覚えていませんでした。ただ、忘れていても、作中で大枠はフォローしてもらえたので、あまり問題はありません。
全体的な特徴としては、「いい意味で加納さんらしい」という所でしょうか。人々の心の暗い部分や、苦い部分を抱えながらも、それを乗り越えていこうとする暖かいストーリー、七つの作品を読み終えた時、始めて見える大きな謎。この作品にもこれらの要素が多く入っています。
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