片岡義男「東京を撮る」

作家でもある片岡義男さんが、東京を撮った写真128枚と、写真ごとに味のある短いコメントが添えられた写真集。最初にいっておきますが,東京のことを何も知らない人に、東京について知ってもらう目的で、この写真集を読んでもらっても、おそらくほとんど意味を成さないでしょう。古ぼけた家の窓、路地裏、マネキン、飲み屋の赤提灯...etc。そこには普通の人であれば見過ごして、通り過ぎてしまう光景の数々があります。上手く言えないのですが、それは空気のように、片岡さんの肌に張り付いてしまった風景というのを、写真という形でビジュアル化したものではないかという気がします。多分、普通の人には、とてもほっとするいい写真集のはずです。
ただし、あくまでも個人的な意見なのですが、私はこの写真集を読んでいると、とても居心地の悪い気分になりました。何故なのか、いろいろと考えてみたのですが、それは、片岡さんが写真にすることにより拾った光景というのは、実は私が便利さや、上っ面のかっこよさのために切り捨ててきた光景であることに気付かされたからだと思います。
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