ボブ・グリーン「アメリカンビート・1」

ボブグリーンの記念碑的作品ともいえるコラム集。失脚後の元大統領、大量殺人者、情緒不安定気味の映画界のアイドル、そしてビートルズのリンゴスター。彼らのような有名人だけでなく、自分はガンだと告げる若い女性、自分の初恋の女性、バスの運転手等、ごく普通の一般の人々の人間ドラマを浮き彫りにする34編のコラムが所収されている。
まず読んで最初に驚いたのは、作品に描かれている人々の有名、無名に関係なく、同じ目線で彼らを見ていることです。それだからこそ、私達が何気なく通り過ぎてしまう、何気ないで出来事や、人々から、鮮やかなドラマを引き出したり、有名な人たちが普通のマスコミには絶対に語ることのない一面を見せてくれたりするのでしょう。特に良かったのが、ニクソンの歴史で語られるイメージの中では絶対に見ることの出来ない一面−−誰とも打ち解けること無く孤独で、けどそれを誰かに聞いて欲しい一人の人間−−というのを描き切ったコラムです。
このコラムは確かに書かれてから少し時間が経っていますけど、その当時のアメリカを、シンプルだけど味わいのある文章で切り取った一冊で,決して古いだけの作品ではないです。そして、何故だか、読んでいるとサイモン&ガーファンクルの「アメリカ」という曲を思い出しました。きっと、彼も、その当時の「アメリカ」を探していたのだと思います。
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