浅井ラボ「されど罪人は竜と踊る」

森羅万象を統べる、科学的に裏打ちされた魔術。それを自在に操る、何でも屋の二人。ひねくれ者の毒舌家ガユスと、愛想のかけらも無い、戦いと椅子をこよなく愛する美貌の剣士ギギナ。事務所の財政難を解消するための役所の下請け仕事のせいで、竜と戦う羽目になり、辛くも命懸けで倒したまでは良かったものの、そのために、皇国を揺るがす大陰謀に巻き込まれることになってしまった。果たして、かれらは生き残れるのか?
正直な所を言いますと、文章はこの上なく癖がありますし、欠点は多い小説なので、作者の文章のリズムに慣れるまでは、読んでいてつらかったです。しかし、その独特な世界観と膨大な設定、テンポの良い毒舌の応酬、スリリングで臨場感に溢れる戦闘シーンの数々。それと、一方的に決め付けるだけのように見えて、案外と逆説的に、本質の一端を突いている政治や歴史に対するものの見方や考え方。その独特ともいえる、濃厚な描写は、作品の欠点に目をつむっても、読む価値が十分にありますし、嵌まった人は癖になるのではないでしょうか。講談社の「ファウスト」とかを面白いと思っている人なら、ライトノベルだと馬鹿にせずに読んでみてもいいのではないでしょうか。と、いうよりライトノベルではないでしょ?、この作品。
ISBN:4044289018:DETAIL