荻原浩「オロロ畑でつかまえて」

人口わずか三百人で、ぱっと見た感じなんのとりえもなく、ただ、超過疎化にあえぐ田舎のなかの田舎・大牛郡牛穴町。その村の、青年と呼べない人たちも含めた青年部のメンバーが、村おこしのために立ち上がった。ところが、彼らに手を差し伸べてくれる広告会社は、皆無で、やっと手を組んだ相手は明日にも倒産しそうなプロダクション、ユニバーサル広告社だった。当然のごとく、まともな村おこしのアイデアでこの現状を打破できるわけはなく、半分以上やけくその「牛穴村・新発売キャンペーン」が行われる。
最初に読んで驚いたのが、とても読みやすいこと。読みやすいからといって、内容が無い訳ではなく、ユーモア小説としても優れた作品だと思います。文章の押し引きのテンポが良く、ユーモアのセンスも素晴らしい。特にお笑いが自己満足に上滑りせずに、サラりと笑わせてくれているところが、私的にはいいです。更に、お笑いだけでなく、村人、プロダクション側の人間と、マスコミや観光客の間の、踊る人、踊らされる人達による人間模様は、風刺も利いていて、この作品がただの面白いだけの小説ではないことがよくわかります。少し疲れていて、すっきりとした面白い小説が読みたい。けど、あんまり中身がないものは遠慮したい、という方には是非おすすめです。
ISBN:4087473732:DETAIL