不知火京介「マッチメイク」

あとがきに書かれている通り、読んでいて突っ込み所が多い作品ではあります。どう見ても書かれている内容は、ミスター高橋さんの本に引きづられすぎていますし、登場するレスラーも現役のレスラーを連想させるのは問題はないかと思いますけど、描き方があまりにも安易に連想させすぎだと思います。この作品は江戸川乱歩賞受賞作だったそうですけど、プロレスについて興味のかけらもない選考委員の人が、どう評価したのかは興味があります。もし、この作品を「新鮮」とか「斬新」とかいう理由で受賞させたとしたら、その選考委員は勉強不足ですね。
欠点だらけの作品ではありますけど、そう思いながらも450ページ以上ある文庫であるにも関わらず結構一気に読めたのは、作者の文章にそれ相応の力があったからだと思います。特に、プロレスの試合や練習のシーンの描写力は説得力がありましたし、プロレス界の強さとうさんくささとがないまぜになった感じの雰囲気というのは良くでていたと思います。
ISBN:4062754800:DETAIL