荻原浩「なかよし小鳩組」

倒産寸前の零細広告会社のユニバーサル広告社の社長の石井が久しぶりに大きな仕事を取ってきた。喜ぶのもつかの間、仕事だったら手当たり次第取って来る「悪食」の石井がまともな仕事を取ってくるわけがなく、その中身は、なんとヤクザ小鳩組の、CIによるイメージアップ作戦というものだった。かくして、アル中でバツイチのコピーライターの杉山達の奮闘が始まるのだった。
今作は、すばる小説新人賞を受賞した「オロロ畑でつかまえて」の続編ともいえる作品です。前回は、日本の最秘境の村おこしをしたユニバーサル広告社の面々が、今度は、ヤクザを相手に四苦八苦します。杉山達とヤクザの、情けないやり取りで笑わせてくれて、バツイチの杉山が情けないながらも別居中の娘のために父親としての、食いものにしようとするヤクザ達に、同じ人間だということの、そんな意地を見せようとする姿に、ほろっとしてしまいます。その、姿が正直どうしようもないくらい格好悪いのですが、その格好悪さゆえに、弱くても一生懸命生きている姿に感情移入してしまうのでしょう。
本書は、形態はユーモア小説の形をとっていますが、一作目よりも、意外とシリアスで骨っぽいなあ、という感じがしました。けど、相変わらず、しっかりと笑わせてはくれます。
荻原浩さんの作品って、一時期は大型書店に行かないとなかったのですが、本屋大賞の影響で、最近はコーナーを作る書店さんも増えてきました。もっと読まれてもいい作家さんだけに、こういう形で今まで知らなかった方に、手にとってもらえる機会が増えるのはいい傾向ではないでしょうか。
こうやって、偉そうに書いている私ですが、「明日の記憶」はまだ未読です。近いうちに、そのうち、いつかは...読みたいです。
isbn:4087475573:detail