赤木毅「贋作遊戯」

伝説の詐欺師・四条君隆とその孫娘・るぅの元、日本一の詐欺師を目指し修行中の主人公・立見広介。まんまといんちき宗教家を騙し、大金をせしめたまでは良かったのだが、その直後、突然現れた男達に突然拉致されてしまう。拉致された館の主人が、伝説の詐欺師「マダムシルク」だった。マダムは広介に、彼女の一番弟子とペテン勝負のゲームを提案する。勝負の内容は三人の金満家が持つそれぞれの美術品を奪うこと。その勝負に胡散臭さを感じ、乗り気ではない広介だが、何故かその場に立ち会った四条が広介に参加を勧めるのであった。
この作品は詐欺師・立見広介のぺてん勝負を描いた「遊戯」シリーズの第二弾になります。前作の登場人物を基本的に引き継ぎながら、新たなキャラクターを登場させ、一対一のペテン勝負の駆け引きの面白さを描いています。正直、仮にこの作品の舞台が現代だとしたら、それほど面白くない作品になってしまったと思いますが、昭和初期というきな臭さがただよいながらも、大正ロマンの名残を残しているという時代設定の妙が、この作品の大きな魅力になっています。作品の方も、ペテン勝負の駆け引きの描写がやや、あっけないかなあという気がしますが、三つの美術品が揃ったあとに分かる大きな仕掛けや、決まったと思ったところで、二転三転する勝負の行方など、コンゲーム小説の醍醐味が、分かりやすい文章で描かれており、敷居を高くせずに気軽に楽しめるいい小説です。興味のある方は、第一作目の「紳士遊戯 (カッパ・ノベルス)」から読まれることを、おススメします。
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