矢作俊彦「マイクハマーへ伝言」

isbn:4041616034:detail
スピード違反でパトカーに追跡され、首都高速から墜落して死んでしまった一人の若者。彼が乗っていたポルシェを共有していた、マイクハマーと呼ばれる男と仲間たちは、彼の死に不信を抱く。やがて、真相をつきとめたマイクたちは、警察に復習を計画する、というストーリーの、ハードボイルドとも、青春小説とも言える作品。洗練されて端正な文章、独特な比喩や言葉の使い回しをもつ本書は、やや癖があり、読む人を選びますが、ひとヒネリきいたものが好きな人にはおススメです。漠然とストーリーを追っていると、登場人物たちが、車や音楽や野球の話をとりとめもなくしているだけのように感じるのですが(そのやりとりだけでも、十分に面白いのですが)、気が付くと、それさえも伏線にして、話がきちんと展開しているのには驚きました。書かれたのが、かなり以前なので、ディティールが古臭く感じてしまうことがあったり、文体がとっつきにくかったりする部分もありますが、独特の密度をもつ文体と、ストーリーは、他の作家にはない独特なものがあります。